テセウスの船とは
思考実験の題材として有名な「テセウスの船」です。
伝説の船テセウスがやってきた。アテネの人々はこの船を大切に保存してきた。
時が流れるにつれ、テセウスの船に使われていた木材は腐りはじめ、朽ちた部分は修理され取り替えられてきた。
大切に修理されてきたテセウスの船は、ついに元の木材がすべて新しい木材に取り替えられてしまい、
元の木材を何とか組み立てるともう一つのテセウスの船が出来上がった。修理されたテセウスの船と、元の木材を使って復元されたテセウスの船、どちらが本物のテセウスの船なのだろうか？
さて、あなたはどちらのテセウスの船が本物と感じますか？
Ａ：修理されたテセウスの船
Ｂ：復元されたテセウスの船
つまりは、アテネにやってきた当時のテセウスの船と同じ船と言えるのはどちらの船なのでしょうか？
これは、人によって答えが異なるでしょう。
例えば、火事で燃えてしまった昔の城を今の時代に当時の技法と当時存在した材料のみを使って作ったとしても、当時のお城そのものであるといえば違和感を感じるはずです。
しかし、修理を繰り返し、結果的にすべての材料が取り替えられた城なら、違和感はまだ軽いものになるはずです。
結果的にすべての材料が取り替えられたなら、当時の技法で当時存在下であろう材料で今作った城と何ら変わりはないように思います。この場合、違和感の差はどこからきているのでしょうか？
おそらくそれは、昔から今までに継続してそれが存在していたかどうかです。
修理を繰り返してきた城はずっと昔からそこに存在していました。対して今作った城は突然そこに城が現れたのであり、少し前にはなかった城です。ここに昔からあった城という感覚は持てないでしょう。
テセウスの船で言うと、復元されたほうの船は突然現れた船です。
修理を繰り返してきたテセウスの船は昔からあった船です。
しかし昔のテセウスの船と同じ木材を使っているのは復元されたテセウスの船です。
あの時、あの時代の海を航海し、アテネにやってきた木材は、復元されたテセウスの船にのみあるものです。
こうしてみていくと、何を基準に考えるかでまったく答えが異なってくることがわかります。
あなたの価値観で、あなたが今考える基準を元にすると、テセウスの船はどちらが本物になりますか？