人は緊急事態にパニックに陥る、はウソ!?

脳と思考, 思考, パニック, 事件

人は、常に安全を求め、いつもと変わらない安定を求めています。そして、その心理で自分自身を説得し、納得しています。これを正常性バイアスといいます。

災害に遭遇した時も、いや、そんな大したことじゃないでしょう?大げさに考える必要はないよ。と信じ込もうとします。
警報が出て、避難が必要といわれても、いやいや、そんなこと言ったってね、どうせ大したことないんだよ。大丈夫だよ。と自分を説得し、結果逃げ遅れてしまいます。いつもと変わらない、をほしがり、脳を説得してしまうのです。
東日本大震災の時も、この心理が働き、避難せずに自宅で津波にのまれた人が多数いました。

そうも言っていられない、目の前で大惨事が起き、どう考えても1分1秒を争う危険だとわかる状況ではどうでしょう。
飛行機が事故を起こし、今にも爆発しそう、という時も、多くの人はそのまま沈黙し、呆然とすることがわかっています。
人は目の前で起きたこれほどの危機的な状況も正常性バイアスにより否定するのです。それによって今起きた状況を自分の中で整頓し、自分がどんな状況に置かれているのか、を受け入れるまでに時間を要してしまいます。
ようやく逃げようと考えるころには時すでに遅し。爆発の炎にのまれ犠牲になってしまうでしょう。

実際に1977年に起きた離陸しようとした飛行機と、滑走路を移動中の飛行機が接触した大事故(離陸しようとした飛行機の乗客乗員は全員死亡)で、移動中の飛行機に乗っていた人々は、事故直後呆然とし、席に座ったまま動こうとはしなかったそうです。脱出に成功した人は、多くの人は自分が駆け抜けていっても反応せず席に着いたままだったと話しています。脱出するという行動をとった約70人以外はその後の爆発による火災で死亡しています。

もう一例この心理を裏付ける事件があります。2003年に起こった韓国の地下鉄放火事件です。この事件では、約200人もの人が犠牲になりましたが、のちに驚くべき写真が公開され話題になりました。写真は放火直後のもので、煙が車内に充満し、明らかに危険な、異常な状況だとわかるものでした。しかしそこに映る人々は、煙を吸い込まないように口に手を当ててはいるものの、皆座ったまま逃げようとはしていないのです。
目の前に迫った危険を否定する正常性バイアスが働き、逃げるという動作を起こせずにいるのです。

ランカスター大学の心理学者ジョン・リーチによると、およそ75%の人がこうして呆然と頭が働くなり硬直してしまい、残りのうち半分がパニックに陥り、もう半分、つまり15%弱の人が冷静に素早く対応するという行動をとるのだそうです。

素早く行動する人は、人より判断力が優れているというより、予備訓練がなされている結果だといいます。もしこういう災害が起こったらどうしよう?避難口は?どのように非難を開始すればいい?どうすれば助かる?という思考実験をすでに済ませているのです。
残りの人々はこの思考実験なしに突然災害に見舞われたので、今からそれをしなければならなくなり、逃げ遅れるのだといいます。

正常性バイアス以外にも、皆が逃げないなら自分も逃げないのが正解だろう、と考えてしまう同調バイアスも原因の一つです。韓国の列車事件でも、誰かが逃げよう!!と指揮をとり、もしそれに同調する人が多かったなら事態は変わったかもしれません。

家具を固定したり、非常食を準備したりといった物理的な準備も大切ですが、心の準備も重要だと気づかされます。

参考文献:思考のトラップ(デイヴィット・マクレイニー著/二見書房)

Posted by admin3


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